【歌の手帖2019年2月号】舟木一夫「純情と乱気流」巻頭インタビューより

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※本インタビューは、「歌の手帖」2019年2月号収録の文章を当時のまま掲載しております

名曲『「その人は昔」のテーマ』をセルフカバーして発売、コンサートツアー全国55本、愛知・御園座特別公演(7月5日~24日)と2018年も「こき使われてるなァ(笑)」な多忙の1年となった、舟木一夫。
12月12日で74歳、まだまだ輝きを増し続ける謎だらけな魅力の舟木サンが2018年11月現在、感じていること、思っていることとは…。

撮影/笹井タカマサ

■シアターコンサートin新橋演舞場(東京)=12月23日(日・祝)~25日(火)/愛知・御園座新劇場開場記念シアターコンサート=2月6日(水)~8日(金)/新歌舞伎座開場60周年記念 コンサートin新歌舞伎座2019(大阪)=2月14日(木)・15日(金)

■コンサートツアー2019=1月25日(金)埼玉・大宮ソニックシティ、2月25日(月)神奈川・相模女子大学グリーンホール、2月26日(火)東京・かつしかシンフォニーヒルズ、3月4日(月)千葉・習志野文化ホール、3月7日(木)埼玉・ウェスタ川越ほか

舟木一夫 コンサートツアー2019 1月25日(金)埼玉・大宮ソニックシティ、2月25日(月)神奈川・相模女子大学グリーンホール、2月26日(火)東京・かつしかシンフォニーヒルズ、3月4日(月)千葉・習志野文化ホール、3月7日(木)埼玉・ウェスタ川越ほか

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■舟木サンは、基本的に懐深く、辛抱強い優しさをお持ちだが、同時にせっかちでもある。撮影は大概、想定時間よりかなり早く終わる。それもこれも、ご自身を一番理解しているからこそ。ということで、インタビューの方はいつもゆったりと、スタッフを交えつつ和やかに、ざっくばらんに行われる。

お互いさまに

2018年から「コンサートは1日1公演にする」を実行されておられますね。

「全部が全部、そうはいかないところもあるけどね。いきなり全部は難しいからさ。皆さんとも約束しているんだけど〝75歳の誕生日までは、(2回公演も)やります〟と。まぁ、誕生日が12月だから、2019年いっぱいということだよな」

コンサートは今年から休憩なしのスタイルから、休憩を挟んでの2部構成になりましたが。

「いいと思う。やっぱりね、お客さんも年を重ねているわけだから。いつも言うように、お客さんと俺は一対のものだからね、お互いさまにと。休憩が入った方が、ゆったりお楽しみいただけると思うし。麦茶の1杯でも飲もうか、とかさ。どこかで休憩なしで行くケースも出てくると思うけど、バリエーションとして」

1日2食

最近の食事事情はいかがですか。お変わりないですか。

「今、1日2食。身体が〝そんなにいらない〟って言うんだもん(笑)。3食だと胃がもたれるんだよ。トシだね」

お赤飯、タケノコ、根菜類、今でもお好き?

「変わらない。根菜類好きだね。目がないくらい、好き。最近、たまに食べたくなるのは、お粥。月に1~2回は食べに行く。ちょっと疲れた時に、いいよ。ザーサイや塩昆布入れたりね」

エエのよ(笑)

体調は万全でしょうか。

「幸福にして、身体の好条件が重なっていて、遺伝的に。親からもらったものは、いいね!まさに、歌い手向き。肺は1.2倍あるし。若い頃、水泳部で鍛えたし。声帯の発展途上の頃、一番いい時にクラシックを3年やったから、発声の基礎ができた。ツイてたよ、いろんなことが。

間もなく後期高齢者だからね。それが生の舞台ができる、コンサートができる。そういうことが、殊更何かを整えなくてもできている。特に運動も健康管理も、一切合切していない、できないヤツだからさ。乱暴思考。乱気流に生きる男(笑)」

乱気流(笑)。とはいえ、自堕落に…でもないですよね?

「充分、自堕落だったよ(笑)。今でも、相当乱暴な生活をしている。夜更かしもするし、規則正しい生活でもないし、運動も食事も気をつけてないし。何にもしてない。心肺機能もそうだけど足腰、膝のバネもいいしね。だからさ、親からもらったものがエエのよ(笑)」

舟木一夫 12月23日から3日間、新橋演舞場で開催されるシアターコンサートですが、第1部がヒットパレードでオリジナル曲を、第2部では「日本の名曲たち ふるさとの…」。2019年は愛知・御園座と大阪新歌舞伎座でコンサート、こちらの第2部が「日本の名曲たち─めぐる季節に」です。なんと、『あんたのバラード』や『なごり雪』『夢の途中』『わかれうた』といった歌が並んでいて、とても興味深いです。

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日本の名曲たち

12月23日から3日間、新橋演舞場で開催されるシアターコンサートですが、第1部がヒットパレードでオリジナル曲を、第2部では「日本の名曲たち ふるさとの…」。2019年は愛知・御園座と大阪新歌舞伎座でコンサート、こちらの第2部が「日本の名曲たち─めぐる季節に」です。なんと、『あんたのバラード』や『なごり雪』『夢の途中』『わかれうた』といった歌が並んでいて、とても興味深いです。

「ニューミュージック世代のスタンダードナンバーだよね。俺自身、初めて唄う歌もある。『少年時代』とかね。コロンと流行歌の趣が変わった時代、フォーク、ニューミュージックが若き円熟をしていた頃を中心にね。〝日本の名曲〟シリーズとして遠藤実先生、船村徹先生、美空ひばりさんを唄ってきた。偏らないつかまえ方をしないとね。大ヒットしたというだけではなくて魅力的な作品、という。色気がある、情感があるという歌。ヒットした順番にただ並べてみても、意味がないんだよな」

2019年も、コンサートツアーがもちろんあります。

「構成も選曲も作って、スタッフにすっかり渡してあるよ」

早いですね!! 以前は、結構ギリギリでしたのに。

「そうはいかなくなっちゃったんだよ(笑)。これは俺も賛成したんだけど〝チラシに曲目を載せる〟と。何を唄いますよ、を載せる。1~2曲の変更は、実際にリハーサルをやって〝ちょっと違うね〟と起こりうることだから、そこのところはご容赦いただいて」

どんな雰囲気の構成ですか?

「とりあえず、2部構成。1部は時代劇の世界をどうぞ…と。『銭形平次』であるとか、俺が演った時代劇の歌…『一心太助 江戸っ子祭り』とか『火消し若衆』『喧嘩鳶』あたりね。全国のお客さまが今比較的、お聴きになれないのが〝日本調〟というニュアンスのもの。お好みやいい悪いは別としてね。俺は俺のジェネレーションに向かって唄っているけど、〝そういえば聴いてないよなぁ〟というのが、日本調。持ち歌としてあるんだから、唄うしかないかなと。全部がヒット曲なわけではないけど、そういう世界をね」

綺麗な気持ち

アルバム1枚がストーリーになっていて、映画「その人は昔」にもなりました、そのテーマ曲である名曲『「その人は昔」のテーマ』をセルフカバー、新曲としてリリースされました。

「うちのお客さんはご存知だけど、一般的には知られていない歌だよね。元々、アルバムのテーマだし、映画にもなったけど。テレビで唄ったことないからさ。長いし、テーマだけ唄ったって、何だかよく分からないから。それが、ここ10年の間、コンサート中にいろんなポジションで唄ってきたら、育ってくれたわけだ。ほかのヒット曲に力負けしない存在感になってくれた。もちろん、作品自体は力負けなんかしてないんだよ。知名度という点でね。ウインドウショッピングでは目につかない、そういう作品だから。毎年、育ってくれる歌、これから育つ歌があるんだけど、このところ目に見えて育ってきているのが『「その人は昔」のテーマ』と『哀愁の夜』。歌い手として最終コーナーへ向かうに当た
り、育って欲しい歌5曲のうちの1曲が『哀愁の夜』だったから」

『哀愁の夜』も映画になりましたし、ヒット曲でもありますが。

「昭和の香りを目一杯持っている歌だから、大事にしたいんだよね。お客さんの若き日の風景に、必ずある季節風のひとつだし。『高原のお嬢さん』もそうだけど。今年思いっきり育ってきたのが、その『高原のお嬢さん』」

あと2曲は何ですか?

「『夕笛』と『学園広場』。ほかにもあるけどね。ステージで『高校三年生』を超える『学園広場』、『絶唱』を超える『夕笛』。お客さんに届ける歌としては、誰にもある季節風…舟木一夫を好きだとか嫌いだとか、そういうことは関係なしにラジオから聞こえてきたりした時に、その当時の思い、景色がふっとかすめるっていうかね。自分の青春と重なる時がある。そういう時には、すっごい澄み切った深々とした、綺麗な気持ちになる。歌っていうのは凄いもんだよ。1年くらい前、唄っていてあやうく胸がつまって声が出なくなりそうになったことがあって。『初恋』なんだけど、いつも唄っているのに、ある瞬間思いっきり、自分が初めて恋をしていた時の季節風がふわーーーっと吹いた。唄っているつもりが歌に唄われちゃった、みたいな。何かが込み上げてくるよね。熱かった思い、別れたときの突っ張り、1ヶ月経った頃の後悔…溢れ出してくるというかさ。そういうところを、今言った5曲は持ってる。これぞ、THE流行歌だよね。何にも意識しないで、そういうスタンスに自然となれている自分というのは、流行歌手冥利に尽きるよなぁ。2年前に気づいた〝俺は、歌に対しては純情なんだ〟と…」

(笑)。すみません、笑うところではないのですが。

「そりゃ、俺だってそんなこと思ったり、こうやって話すのは照れくさいよ(笑)。めちゃくちゃ照れくさいけど、次の瞬間、〝歌に対しては純情なんだ〟って、納得しちゃうんだよ」

シンプルに。

「とても、シンプル。上手い・下手じゃないんだよね。キャリアと実年齢を積み重ねてきて、若い頃よりよくなっていくものは? 声も容姿も衰えていく、その中でわかってくるのは情と、色気、佇まい。どうしたって、ごく自然に…作れるもんじゃないしな。65歳くらいの時、唄うのがこんなに好きなんだって気づいて、今回の歌に対する気持ちに〝なるほどね〟って」

アルバム!

大変伺いにくいのですが、前回のインタビューで…誌面にはしませんでしたが「アルバム
『WHITE』のベスト盤を作るよ、1~2曲プラスして」とおっしゃっていたので、とても楽しみにしていたのですが、もう2018年は終わります…。

「そう言ったけどね。忘れたのか?俺の好きな言葉は〝支離滅裂〟だ(笑)。できればいいなって思ったし、企画も上がってたけど、正直、スケジュールがね…」

今回は、誌面に書きます(笑)。アルバム『WHITE』を2019年には作られるそうです!と。

「『WHITE+1』ね。作りたいとは思ってるからさ。〝日本の名曲たち〟シリーズも5回になるから、それも残したいし。その2つのアルバムが作れたら歌い手の晩年としては、幸せかな…という気持ちもある」

舟木一夫 2019年にはアルバム『WHITE+1』を

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馬なり、だね

2019年も引き続き、楽しみにしております。

「馬なり、だね。ムチを入れたら壊れるからさ(笑)。馬なりで気持ちよく走って、お客さんに聴いていただいて〝馬が走っているのは、やっぱり綺麗だな〟と思っていただけたら、もうそれで何も言うことはない。勝つためではなくてね、ただ走る、その馬なりの走りをね」

編集後記

■嬉しいアルバムの約束も飛び出した、今回のインタビュー。2019年後半、そして2020年の仕事の話も伺ったが、「いいのか? こんなジイさんの先々のスケジュールを抑えちゃって、って言ってるんだよ」と豪快な笑い声をたてながらコートを着て、スタジオを後にされた舟木サン。「凄い方なのに、ざっくばらんで楽しくて不思議な方なんですねぇ」とカメラマンとスタジオスタッフ。
そう、生のステージを観たり、実際にお会いすればその謎な魅力はさらに深まるばかりなのだ。

※本インタビューは、「歌の手帖」2019年2月号収録の文章を当時のまま掲載しております

このインタビュー内で紹介している楽曲

『「その人は昔」のテーマ』

▼楽曲はこちらのオフィシャルサイトで購入頂けます
日本コロムビア 舟木一夫ディスコグラフィページ

▼オフィシャルサイト
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