純烈・酒井一圭「ステキなタイミング」【歌の手帖2021年12月号】巻頭インタビューより

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※本インタビューは、「歌の手帖」2021年12月号収録の文章を当時のまま掲載しております

明治座での初座長公演大成功、新曲『君がそばにいるから』が好調、初の主演映画「スーパー戦闘 純烈ジャー」の評判もよく、同映画第2弾の撮影に入った純烈。コロナ禍でも、元気で明るい話題を常に振りまく彼らのリーダー・酒井一圭がソロで表紙&巻頭に初登場、その人柄に迫る―。

撮影/島崎信一

■プロフィール

酒井一圭(さかい かずよし)
1975年6月20日生まれ。大阪府吹田市出身。186センチ、AB型
「逆転あばれはっちゃく」の5代目桜間長太郎、「百獣戦隊ガオレンジャー」のガオブラック役ほか。何度も再演となった、大人気ビジネスエンターテインメント「WAY OUT」では主演を務めた。俳優を続けながら、プロデューサー業、プロレス…と様々なことにも携わった。
2007年、メンバー1人ひとりを呼び出し「紅白を目指して親孝行しよう!」と誘い、純烈を結成。地道なボーカルトレーニングを経て2010年、『涙の銀座線』でデビュー。代表曲は『スターライト札幌』『プロポーズ』『純烈のハッピーバースデー』ほか。
新曲は『君がそばにいるから』で、9月15日にEタイプ発売。2018年、第69回NHK紅白歌合戦に念願の初出演。以降、ʻ19年、ʻ20年と連続出場。酒井は、純烈作品の作詞も手掛けている

■発売中! 新曲『君がそばにいるから』(Eタイプ)
映画「スーパー戦闘 純烈ジャー」サウンドトラック
収録曲=NEW(入浴)YORK(主題歌)/君に会うために/勇気のペンライト/心のままに/愛をください~Donʼt you cry~/今夜はドラマチック/愛をありがとう/プロポーズ

〝一番下手〟から

■酒井一圭という人物をひと言で表すのは、少々難しい。豊かなアイディアと瞬発力、鋭い決断力と判断力で物事を進める一方、情に厚く涙もろい一面も…。

―今年もまたコロナ禍で大変な状況が続きましたが、愛知・御園座で里見浩太朗先輩との公演、東京・明治座初座長公演、コンサートツアー、映画「スーパー戦闘純烈ジャー」と純烈さんらしい楽しいことをたくさん、提供し続けてくれました。いつもは純烈リーダーとしてお話を伺っていますが、今回は、酒井さん本人について伺います。

「今日、この(撮影している)場所はすごく嬉しいんですよ。この近くに、小さい頃に入っていた劇団があってさ。駅から降りて歩いた街並みを思い出すよねぇ。2年くらい通っていたから。懐かしい」

―その劇団に通い、<逆転あばれはっちゃく>の5代目桜間長太郎に抜擢、人気者になりほかのドラマにも出演するも、ご自分から芸能界を休むことを決めたんですよね。

「そう、このまま芸能界にいたらダメだ…と思ったのと、家にいろんな人が来て…あばれはっちゃくの家だ!っていうのでね…家族に迷惑もかけたし」

―小さい頃は、どんな音楽を聴いてたんですか?

「ローリングストーンズとかビートルズだね。自分の世代の音楽ではないんだけど、友達のお姉さんやお兄さんの影響で。音楽だけじゃなくて、上の人から色々学びたい。〝一番下手〟なポジションにまず入りたいんだよね。子供の頃から身体が大きかったから野球部に誘われたけど、一番下手なわけ。で、みんなのことを見て盗んで、誰よりも練習した。純烈もそうだよね。何も知らなくて一番下手で、大先輩方とステージでご一緒した時に、勉強させてもらった」

―そして1994年から、再び芸能界へ…小さい頃から大好きだった戦隊ヒーローを目指してオーディションを受けられたとか。

「この頃使っていた写真で受けまくって落ちまくった(笑)。ちょっとした役では出られたりしたけどね。それで<百獣戦隊ガオレンジャー>の書類選考に受かった…受かったのに、オーディションの前にこの髪型からモヒカンにしちゃった。

で、〝髪型が全然違うじゃん〟ってレッド役のところから端っこに自分の書類が動いたのを見て、レッドじゃない芝居に切り替えた。それで、ブラック役に受かって」

―なぜ、急に髪型を?

「たまたま再会した友達に〝酒井、服ないならあげるよ〟って言われてもらったのがストリート系の服でさ。それが長い髪に全然似合わなくて(笑)。で、テレビを視ていたらガレッジセールのゴリさんが出ていて、ストリート系の服にモヒカンっぽい髪型しててさ。あ! この髪型にすればこの服が似合うようになるなって。そうしたら、ちょうどガオブラックのイメージになったみたいで。あの時、友達に再会していなかったら、ガオブラックになれていなかったよね」

止められない

純烈・酒井一圭「この髪型にすればこの服が似合うようになるなって」

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―その後、プロデューサー業、プロレス、ミュージカルの主演も…。

「いろんなことが出来たのも、すべて出会いのお陰なんですよね。テレビであばれはっちゃくを視て、なりたい!自分も一緒にまぜて欲しい!と思った。これも出会いだし。

大人になってからも、そう。お笑いを観に行ったらシュールなんだけどおもしろいことをしている奴がいて、レイパー佐藤っていうんだけどさ。翌日、一緒に仕事した芸人にその話をしたら、〝レイパーなら一緒に皿洗いした仲間だよ〟って。そこで繋がったんだよね。レイパーは戦隊モノとか大好きで、遊びに行ったらフィギュアだらけなの。そこで〝昔、自主製作の映画撮ってたんです。バカバカしいんですけど見てもらえません?〟って見せてもらった映画が<クラッシャーカズヨシ>の元になったものでさ」

―その出会いもなければ、映画に出演せず骨折もなく、前川清さんの夢も見なかったわけですから、純烈もなかった…。それにしても出会いというか、酒井さんの場合、自分から見つけて出会いに出かけていますよね。純烈さんのメンバーにも、自ら口説きに出かけたわけですし。

「ああ、そう言われたら…そうかもね。好きなんだけど、どうやったら近づける?って訊くもんなぁ。ただ、それは狙ってしていることではなくて、もう止められないというか、そうなってしまう(笑)」

あの頃の未来に

純烈・酒井一圭「夢は紅白!親孝行!」

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―純烈としてデビューした頃からキャッチフレーズは〝夢は紅白!親孝行!〟でしたが、デビューして数年はまさに夢物語だったじゃないですか。ただただコツコツ、がむしゃらに独自の道を拓き歩いてきて…名曲の歌詞ではないですが…今、あの頃の未来に立ってますか?

「立ってる。すべてが描いていた通りではないけれど」

―他人から見たら、不遇だとかツイていないね…と言われがちな時代でも、いつも楽しそうでした。例えば、お金がないとか、仕事がないとか…。その真っ只中のいる時でさえ、楽しいのですよね?

「そうね。だってさ、何にも仕事がないのに、語ることしかできないのに、一緒にいてくれる人がいて、自分を受け入れてくれる人がいる。それはもう、とても幸せで楽しいことじゃないですか。最大公約数の人に受け入れられるなんてことは、最優先事項ではないからね。

仕事を通して出会った人がいて、どちらかが…それともお互いにその仕事から離れたとしても、人間同士出会えて、想い出もいっぱいあるから。純烈が売れてるとか、その人の仕事が順調とか、そういうことは二の次でさ。1対1のことの方が大切なんじゃないかと思うんだよね。人と人との関係、幸福感って、出会えて、想い出を作れて、どんな立場になろうとも、お互いに仲間でいられることがすごく幸せなことだから、自分のプライオリティとしては最優先にもっていくし、そうであり続けたいんだよね」

―実は昔、酒井さんにはすごく世話になって…という方に何人か出会いまして。その方々は皆さん、「やっと少し、酒井さんに恩返し出来るかも」と。

「いやいや、俺の方が世話になってて。ありがたいですよね。すべては、出会いとステキなタイミングですよ」

―いい人、優しい人と陰で褒められていることも多いです。

「優しい…どうだろう。例えば、色々あって人に会いにくくなってしまう状況ってあるじゃないですか。そんな時に、酒井なら会ってくれる…そういう風に思ってもらえてるんじゃないかなぁって。そういう時に自分を思い出してもらえることが、すごく嬉しくて。だからさ、世話なんかした覚えはないんだけど、調子悪い時に会うから、そうやって言ってもらえるのかもね。

でもさ、エゴなんだと思うよ。寂しがりやなの(笑)。まぁ、だから白川裕二郎、後上翔太、小田井涼平さんというメンバーのみんなやスタッフ、仕事関係の方々、もちろん応援してくれるみんなにも感謝してる。世話になった人が多すぎて、お返しするには自分が頑張るしかないよね」

純烈・酒井一圭「西田あいとのコンサート」

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▲西田あいとのコンサートでは、大好きなザ・ドリフターズの人気番組「8時だョ!全員集合」の人気コーナーを行なう場面もあった(2014年)

純烈・酒井一圭「スーパー戦隊ドラマのオーディションに落ちまくっていた頃」

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▲スーパー戦隊ドラマのオーディションに落ちまくっていた頃

純烈・酒井一圭「2時間予定を大幅に超え4時間近い公演となった、伝説の東京・浅草公会堂単独ライブ」

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▲2時間予定を大幅に超え4時間近い公演となった、伝説の東京・浅草公会堂単独ライブ(2015年)

純烈・酒井一圭「映画「クラッシャーカズヨシ~怒る~」撮影中に骨折」

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▲映画「クラッシャーカズヨシ~怒る~」撮影中に骨折。二度と歩けないかも…と言われた後、前川清先輩の夢を見て「そうだ!ムード歌謡だ!」と閃いた

純烈・酒井一圭「短髪から長髪、黒や茶など髪型・色をよく変える」

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▲短髪から長髪、黒や茶など髪型・色をよく変える(歌謡ポップスチャンネル演歌男子。収録/2016年)

純烈・酒井一圭「純烈の前身、「カズ酒井と東京ダンディ」時代」

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▲純烈の前身、「カズ酒井と東京ダンディ」時代(2017年頃)

純烈・酒井一圭「NHK紅白歌合戦、初出場おめでとう!」

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▲NHK紅白歌合戦、初出場おめでとう!(京都にて/2018年)

純烈・酒井一圭「6人時代、デビュー第2弾『キサス・キサス東京』インタビューにて」

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▲6人時代、デビュー第2弾『キサス・キサス東京』インタビューにて(2011年)

純烈・酒井一圭「同じく6人時代。札幌にて」

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▲同じく6人時代。札幌にて(2014年)

純烈・酒井一圭「映画「スーパー戦闘 純烈ジャー」絶賛公開中」

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▲映画「スーパー戦闘 純烈ジャー」絶賛公開中!

子供たち

純烈・酒井一圭「だから仕事を忙しくして、同時に3つ4つのことを考えていた方がいい」

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―リフレッシュ法は?
「リフレッシュは10代、20代、30代でしまくったから(笑)。余裕があると意味のないことをしてしまう。だから仕事を忙しくして、同時に3つ4つのことを考えていた方がいい。今、ありがたいことにコラムの仕事も多くて、作詞も色々やらなくてはいけなくて、毎日〆切がある状態で。自分にとってはそっちの方が合ってる。時々合間には釣り堀行ったり、子供たちとローラースケート行ったり。行動パターンはずっと変わらない。子供たち(4人)は高校2年生からから小学校2年生。家族がいてくれることも原動力だね」

財産

―映画の主題歌・挿入歌の作詞もされていますが、特に『NEW(入浴)YORK』の歌詞…〝しょっぱい値打ち手放せ〟に勇気をもらいました。

「やはり、コロナ禍だし。時代が変わるじゃん。自分を変える、次の時代にシフトする…チェンジしてゆく。持っているものを手放さない限り、次のものが掴めないから。歌詞? うん、すぐに書けた。いくつかのワードを同じ音にいくつかはめてみる。多摩川、高速道路、下道とか景色を変えながらはめてみたり、家族に聴いてもらったりして。例えば〝涙〟を、〝風が〟や〝青い〟にしてみたりね。

そうそう、NHK「うたコン」さんで『NEW(入浴)YORK』を唄わせていただいた時、最初は、白川をフレディ・マーキュリーみたいにしたくて。でも、ディレクターさんから徐々にやんわり断られたんだよね(笑)。そのディレクターさんがガオレンジャー世代で〝僕がやりたいです!〟って手を挙げてくれたという、熱心な方でね。だから、〝フレディじゃなくてもいいよ〟って」

―ガオレンジャーとかを見ていた子供たちが仕事バリバリする世代になって、一緒に仕事する…戦隊モノってすごいですね。

「すごいよね。そこにいられたのは財産だし、本当に嬉しい」

感謝を繋げる

―今年も、ツアーとは別構成の東京・LINE CUBE SHIBUYAでのコンサートがあります。

「まだ何にも決まってないから、お話出来ることがなくて。ただ、楽しんでもらえることは絶対やりたいよね」

―いつも意表をつく、予想外のことをしてくれますので。

「自分が描いていることの中で一番夢物語みたいな、嘘みたいなことをチョイスする癖があると思う(笑)」

―たくさんの夢を叶えてきましたが、実現できなかったことは?

「いっぱいあるよ。ドラえもんにはなれないしさ。親父がね、亡くなった時にドラえもん博物館に行ったのよ。やっぱり、完璧だったね。一番悲しみを打ち消してくれた。ドラえもんにはなれないけど、小さい頃に〝ドラゴンクエスト〟とかで感じた高ぶりや興奮を、次の世代へ感謝としてお返ししていけることが出来たらいいよね」

―時々、取材していて酒井さんは今、何を話しているんだろう?とお話迷子になることがあります。なので酒井さんの頭の中には回転軸といいますか…小宇宙がいくつもあるんだろうなぁ、と。

「(笑)。時々何言っているのか、自分でも戻れないことある。同時に思考を2つ3つ走らせている時あるから、あれ、今何の話してたんだっけ?ってね。でも、それを言うのはシャクだから、そのままいっちゃう(笑)」

―それでも、何となく着地したように思わせる説得力があります。

「違うのよ、そういう教育をそちら側が受けてるから。〝いやいや、ちゃんと答えてよ〟って言わないじゃん。皆さんの優しさですよ。ま、俺も俺なんだけど、そちらもそちらなんです(笑)」

エラーの中にこそ

純烈・酒井一圭「皆さんの優しさですよ。ま、俺も俺なんだけど、そちらもそちらなんです」

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―今年も、NHK紅白歌合戦出場を願っています。

「紅白さんには平成の最後、令和の最初、無観客ということも体験させていただいて本当にありがたいです。自分が参加するタイミング…はっちゃくも、ガオブラックも、すべてタイミングがよかったんだよね。本当、タイミングだよね。一つひとつの出会いのタイミング……里見浩太朗さんとご一緒できたのも、幸耕平先生に作品を書いていただけているのも。

だから、『ステキなタイミング』なんですよ。坂本九さんのね。この世で一番肝心なのは、ステキなタイミング―初めて聴いた時はすごいなぁ、言いきってるよって思った。まさに、そうだよね。ステキなタイミングでの出会い、出来事すべてが今の俺をココに立たせてくれている。出会った皆さんから愛情を感じられるのは、とても嬉しい」

―これからの青写真を少し、教えていただけますか。

「去年、今年とお世話になっていた場所がなくなったりして寂しいこともあったけど、これからも最高にバカバカしくて楽しんでもらえることやっていきたい。例えば…日本武道館でコンサート…実は、ここは日本古来の銭湯だったんです…とかで、風呂に入りながらせりあがってきて、その場で衣裳着たりさ。まぁ、夢物語、妄想だよね(笑)。

こんな時代だからこそ、生きているだけで楽しいじゃないですか。とてつもなくサバイバルだよね。人生は、トライ&エラー。そして、エラーの中にこそ正解があるから、エラーは怖くないし、エラーすることは素晴らしいことだと思っています」

■余談だが数年前、広い楽屋でスタッフがひとり食事をはじめた時、隅で作業していたリーダーが近くへ座り雑談をはじめ、スタッフが食事を終えると、また隅へ戻る…という場面を目撃したことがある。「食事をひとり寂しい状態でさせない」――そんな何気ない優しさも魅力なのだろう。新曲『君がそばにいるから』も好調、映画の第2弾を撮影中の純烈、そして酒井一圭としての予測不能な最高に楽しいことにも注目し続けたい。なお、11月26日には東京の新たな〝ホーム〟になりそうな東京・浅草花劇場にて初ライブを開催する予定。

純烈・酒井一圭「新曲『君がそばにいるから』も好調、映画の第2弾を撮影中の純烈」

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※本インタビューは、「歌の手帖」2021年12月号収録の文章を当時のまま掲載しております

このインタビュー内で紹介している楽曲

『君がそばにいるから』

『NEW(入浴)YORK』

▼楽曲はこちらのオフィシャルサイトで購入頂けます
クラウン徳間ミュージックショップ(純烈)

▼オフィシャルサイト
純烈 Official Website
レコード会社オフィシャルサイト(日本クラウン株式会社)

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