(C)UTANOTECHO Inc.
※本インタビューは、「歌の手帖」2020年6月号収録の文章を当時のまま掲載しております
■前作『雪恋華』では艶やかな激情で魅せてくれた、市川由紀乃。
昨年末にはNHKラジオ深夜便の歌として『懐かしいマッチの炎』をリリースし、〝大人の童話〞のような優しくあたたかな歌世界を伝えてくれた。そして、期待高まる新曲はなんとコブシなしのフォークタッチの昭和歌謡『なごり歌』。一遍の映画のように、短編小説のように、聴き手それぞれのドラマを繰り広げられる作品だ。
(撮影/浅見健一)
新曲のイントロを聴いた瞬間、「まさか!」と嬉しい驚きがありました。
「まさか!と思っていただけで、とても嬉しいです。イントロの最初の音は、馬飼野俊一先生のこだわりなんです。…実は、『懐かしい~』と同時期に出来ていて。幸耕平先生のデモテープ…歌詞がなくて♪ラララ~というメロディだけを先に聴かせていただいたんですけど、それだけでもう泣きそうでした。〝いい歌!〞って」
レコーディングは如何でしたか。
「時間がかかりました…c/w『めばり川』と併せて6時間くらい。『なごり歌』は今までと唄い方も変えたので、〝もう1回いいですか〞〝ちょっとリセットしよう〞〝もう一度唄います。とことん唄わせてください〞と、それはもう歌との戦いでした」
〝ね〞の揺らしなど、初めて聴く響きだなって感じたのは、そんな戦いがあったからなんですね。
「幸先生は、私が出演した番組を全部視て、お会いした時に感想を必ず言ってくださるんです。もちろん、私にだけではなく先生が手掛けているみんなにそうだと思うんですけど。とてもありがたいです。全部わかってくださっているので、先生は歌手の感情や想いを大切にしてくださるんですね。譜面通りに唄うことも大切だけど、それよりも…と」
(C)UTANOTECHO Inc.
早く生で聴きたい!と思ってる方が多いと思います。新型コロナが早く終息するといいですね。
「はい。テレビ等で歌唱はしていますが、無観客なので…お客さまの声援と拍手に、どれだけ背中を押していただいていたのかという感謝を改めて、実感しています。皆さんの前で唄えることの喜びも。とにかく早く、ファンの皆さんにお会いしたいですし、皆さんの前で唄いたいです」
最後に。ピンナップに書いてくれた「決心」をひも解いてもらえますか?
「自分の考えを持っていないとダメだけど。100%の自分ではダメだと思うんです。どこかで甘えも出てきちゃうし…まわりの方々の意見もきちんと受け止めて、自分自身の意思で決心!です」
(C)UTANOTECHO Inc.
1976年1月8日生まれ。さいたま市出身
A型。故・市川昭介氏の門下生
1993年8月21日、「おんなの祭り」でデビュー
NHK紅白歌合戦に2回出場。
昨年の日本レコード大賞で最優秀歌謡賞に輝いた
編集後記
■テレビやラジオ収録をしつつ、来る日に備え、自炊したり歌を覚えたり心身ともに整える日々。たおやかで凛とした美しさの市川由紀乃(ちょっと天然でお笑い好き)に、新たな魅力をプラスする新曲。コンサートツアーはもとより、11月には大阪新歌舞伎での特別公演が待っている。
※本インタビューは、「歌の手帖」2020年6月号収録の文章を当時のまま掲載しております