水森かおり 【歌の手帖2019年7月号】水森かおり「さくら色の心で…」巻頭インタビューより

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※本インタビューは、「歌の手帖」2019年7月号収録の文章を当時のまま掲載しております

巻頭インタビュー さくら色の心で… 水森かおり


1月22日に発売した新曲『高遠さくら路』がロングヒット中。そして3月には東京・明治座で、5月には大阪新歌舞伎座と名古屋の御園座で特別公演を行ってきた水森かおり。
新元号「令和」になってから本誌第1弾となるこの7月号の、表紙巻頭で登場してくれた彼女に、新曲や特別公演のことはもちろん、令和と、来年の25周年への思いなどを、じっくり語っていただきました。

撮影/島﨑信一

百戦錬磨


東京・明治座で行われた水森かおり特別公演(3月9日~18日)。その第1部の「東京そば屋人情物語にぃねえちゃん」は、ザ・ドリフターズの加藤茶さんと仲本工事さんも出演されていて、とても面白い人情喜劇でした。

「ありがとうございます。ザ・ドリフターズのお二人の笑いは、アドリブっぽく見せながら、実は稽古からキチッと話し合って作り込んでいく、計算されたものなんです。日に日に舞台が面白く変わっていくのも、前もって共演者の方々と話し合って、〝もっとこうした方がウケるね〟と、作り込みながら変えていくんですよね。それは、とても勉強になりました」

タライや一斗缶を落とす、ドリフでお馴染みのギャグに、かおりさんが挑戦されていましたね。

「実は最初、あれは台本には書いてなくて、ここはドリフっぽくお願いします…とだけ書いてあったんです。それで加藤さんと仲本さんが稽古中に話し合って、ああいう形になりました。で、私が仲本さんを叩いたり、一斗缶を足に落とす場面があったんですけど、最初は遠慮して、優しくしか叩けませんでした。そしたら仲本さんが〝もっと強くやってくれないと笑いとして成立しないから、強く叩いて良いよ。後は俺達に任せて〟と言ってくださって、すごくかっこいいんですよ。百戦錬磨のプロフェッショナルなんですよね」

水森かおり 明治座の千秋楽近く

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ねっ、すごいでしょ?と

じゃあ、かおりちゃんも日に日に、音を大きく立てて?

「はい(笑)。バン!と大きな音をたてて叩いたら、〝あんな大先輩を、あんな本気で殴って〟と不快に思うお客さまもいらっしゃるんじゃないかと心配でしたが、確かに大きな音を立てて叩いた方がお客さまも笑ってくださるんです。あと、お2人がおっしゃっていたのは、大きい音ほど痛くなくて、変にニブイ音の方が痛かったりするらしいんです。また明治座の千秋楽近くでは、仲本さんが〝今日、一斗缶で叩いた後、楽しみにしておいて〟と言ってくださったんですけど、本番で一斗缶で叩いた後に仲本さんが前転されて…私は驚いて、舞台で本気で笑っちゃいました(笑)」

明治座のマスコミ囲み取材の時、〝ザ・ドリフターズで好きだったのは?〟の質問に、加藤さんと仲本さんを前に、志村けんさん…と答えていましたね(笑) 。

「正直に、と言われたので、子供の頃は志村けんさん派でしたから…(笑)。ただ、ドリフは本当に大好きでしたので、今回ご一緒するにあたり、もう一回昔の映像を見直したんですけど、やっぱり加藤茶さんってすごいんです。実は姉が昔から加藤茶さん派だったんですけど、今さらながら姉に〝ねっ、加藤茶さんって、すごいでしょ?〟と言われました(笑)」

水森かおり 明治座で行われた水森かおり特別公演のマスコミ囲み取材にて、共演の加藤茶、仲本工事の3人で人気ギャグ「加トちゃんペッ!」

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▲明治座で行われた水森かおり特別公演のマスコミ囲み取材にて、共演の加藤茶、仲本工事の3人で人気ギャグ「加トちゃんペッ!」

本当の妹のように

公演には後輩の椎名佐千子さん、岩佐美咲さん、はやぶさのお2人(ヒカル、ヤマト)も出演されていました。

「4人が日に日に成長して、私も頑張らなくちゃ!とすごく励みにもなりました。私自身、4人がいてくれたからこそ気持ちがすごく楽になった部分もあるんです。特にさっちゃんと美咲ちゃんは舞台で姉妹役でしたから、本当の妹のように思えてきましたね」

実際の水森さんは2人姉妹の妹ですよね

「はい。私は妹だったので、小さい頃は妹とか弟が欲しくて、〝お姉ちゃん〟と呼ばれることの憧れがあったんです。お芝居の役柄で〝にぃねえちゃん〟と呼ばれることに最初は気恥ずかしさがありましたけど、だんだん子供の頃のお姉ちゃんに憧れていた自分が出てきて、妹達の面倒をみたい!という気持ちになり、姉役に没頭することが出来ましたね」

そして明治座での公演と同じものが、大阪新歌舞伎座と、名古屋・御園座でも行われます。

「明治座さんで大きな手応えを感じさせていただきましたから、5月の大阪新歌舞伎座さんと名古屋の御園座さんでの公演は、楽しみとドキドキがすごくあります」

体調管理は大丈夫ですか?

「はい。それに私、1ヶ所のところに通い続けるの大好きなんです。歌手というのは普通、同じ時間に起きて、同じ時間にご飯を食べて…という仕事じゃないだけに、そういうことができることがとても新鮮なんです」

切なさが、はらはら舞う

1月22日に発売された新曲『高遠さくら路』が、大好評ロングヒット中です。

「唄うたびに、しみじみと良い歌だなぁ…って感じています。この歌は切なさが半端ないんですよ。例えばキャンペーンで、お客さまから〝今回も良い歌ですね〟と言ってもらえるんですけど、特に女性の方からは〝聴いていたら涙がでました〟という言葉をよく頂くんです。その言葉は歌手として、たまらなく嬉しいものです」

まるで桜の花のように繊細なメロディー展開で、華やかで儚い切なさが残る作品ですよね。

「はい。何度唄っても、その切なさが心の深いところに、はらはら舞うように響いてくるんです」

新曲の舞台となる高遠は長野県伊那市にある、日本3大桜の名所のつでもありますが、長野県の思い出は?

「子供の頃は、長野県へスキー旅行に家族とよく行っていました 」

スキーの腕前は?

「パラレルに毛が生えたくらいです(笑)。でも父はスキーが得意でしたから、私がオムツをしている頃からスキーウエアを着せてもらって、スキー場にはよく行っていたんです。例えば年末年始は長野の戸狩のスキー場に行くのが定番で、戸狩の旅館で年越しをして、紅白を視て、初詣をしていました。そう言えばその戸狩の旅館は、毎年、各地から同じ方々が泊りに来るんですけど、その常連さんの中にいつも大阪からいらしていた大学生のお兄さんがいたんです。で、私は当時から歌が好きで、ちびっこのど自慢とかに出ていましたから、その大阪のお兄さんは私をずっと応援してくださっていて、実は今でもお手紙をくださるんです。嬉しいですよねぇ」

桜と令和と平成

かおりさん自身、桜で思い出すのは?

「私の実家のそばに桜の名所の飛鳥山公園があるんです。で、小学生の頃は学校が終わると、家にランドセルを置いたら、すぐに自転車に乗って飛鳥山公園に行き、友達と遊んで夕焼けチャイムが鳴っても家に帰らず、遊び続けて親に怒られる…という(笑)」

最近、お花見は?

「好きな人がいれば、一緒に見たいな …と思うんでしょうけど、最近は全然そういうのがないので、桜の時期になると、ああ …桜の季節だなぁ…と思うくらい(笑)」

5月から新元号の「令和」になりますが、平成元年の頃は何をされていました?

「中学3年生から高校に入学する頃でした。たしか消費税がスタートした年で、国鉄もJRになって(笑)。だから平成になって、なんか空気が変わったな、というのを感じたことを思い出します。それは自分が高校生になった、というのもありますが、あの時は確かに色々なものが変っていくな、というドキドキする空気感があったことをすごく覚えています」

令和になって、その時と同じ空気感になるんでしょうね。

「楽しみですね。そう言えば令和が発表される1ヶ月前くらいに、うちの姉から〝新元号、内奏になるらしいよ〟という電話があったんですよ。だから私もみんなに〝新元号は内奏になるらしいよ〟と言っていたんですけど、しばらくしたら、また姉から電話があって〝ごめん、内奏は新元号じゃないんだって〟と言われて〝え~っ、もうみんなに言っちゃったよ。恥ずかしい〟と…うちの家族は私も含めて、おっちょこちょいなんですよ(笑)」

水森かおり 25周年と東京オリンピック

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25周年と東京オリンピック

来年は早くも25周年。

「20周年の時は、とても忙しかったんですけど、すごく幸せで毎日が楽しくて。その時に、またこういう幸せな周年が迎えられるように1年1年頑張っていこう、と思ったんですけど、もう来年になるんですね。でも今年は、東京・大阪・名古屋での特別公演など、自分が思っている以上の24年目をすごさせていただいているので、来年は20周年以上の幸せな周年を目指したいです」

来年と言えば東京オリンピックもありますが、観に行きたい種目はありますか?

「やっぱり開会式を観てみたいですけど、チケットが入手困難みたいですから(笑)、マラソンを沿道で応援したいな。実は箱年駅伝で母校が出場した時に、短大の時の女子4人で横浜の方に応援しに行ったんです。でも、実際に生で見ると、ランナーの方は速いですよね。一瞬で通り過ぎて …あれはテレビで視るだけじゃ分からない事ですよ。実は長野オリンピックの時に、家族で白馬にスキーに行ったんですけど、偶然ジャンプ競技のチケットが手に入り、団体で日本が金メダルを獲ったのを見て、すごく感動したんです。こんな歴史に残るものを生で見られて、と」

やっぱり歌と同じで、生で見るのが一番ですよね。では、最後に今の心の色は?

「新曲『高遠さくら路』が桜の歌ということもあり、今は本当に、さくら色の温かい気持ちでいられる日々です。ですから新たな令和という時代を、さくら色の心で唄っていき、来年の周年が幸せという桜で満開になるように、笑顔で頑張っていきたいですね」

水森かおり「新曲『高遠さくら路』が桜の歌ということもあり、今は本当に、さくら色の温かい気持ちでいられる日々です

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※本インタビューは、「歌の手帖」2019年7月号収録の文章を当時のまま掲載しております

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