田川寿美

(C)UTANOTECHO Inc.

※本インタビューは、「歌の手帖」2017年8月号収録の文章を当時のまま掲載しております

昨年25周年だった田川寿美。そして、新たな出発となる26年目に臨む新曲『心化粧』は、「とても良い出会い」だったと彼女。そこにある夢の色、田川寿美の色を語っていただいた。

撮影/浅見健一

殻を破れた

昨年は25周年で、ファンの方と触れ合うイベントも積極的に行い、前作『哀愁酒場/火の舞』もヒット。充実した年になったんじゃないでしょうか?

「はい。25周年は改めて初心に戻り、好きな歌を唄わせていただいている喜びや、歌を通してたくさんの方と出会える人生そのものが、ありがたい…と心から思える1年になりました」

25周年記念コンサートでは「殻を破れた気がする」とおっしゃっていましたが、
それは具体的にどういう事だったんですか?

「弱い自分や不器用な自分を笑えるようになった…という事でしょうか。
そして、人に助けていただいたり、甘えさせてもらったりすることが、素直に出来るようになったのも大きいのかな」

田川さんは自分に厳しいからこそ、人にも甘える事が出来ないタイプ、でしたよね?

「そうですね(笑)。でも、ここ2~3年で、気持ちも大きく変わりました。
それまでは、歌手である、という事に対して、必要以上に、いつも自分と厳しく向かい合ってしまう私がいたんです。でも、年齢を重ね、環境も変わった事で、考え方の視野も広がりましたね」

 

ワクワクしています

さて、気持ちも新たにした、26年目の新曲『心化粧』。
裏声をほぼ使っていないメジャー調の演歌は、田川寿美の作品では珍しいですよね?

「初めてですね。だから、今からワクワクしています。
私自身は、皆さまが、待ってたよ!と言ってくれそうな気がするんです」

新曲は色々な方に好んでもらえそうな、キャッチーな演歌作品と言えそうですし、田川さんのその気持ちはよく分かります。

「私の色を活かしつつも、お客さまの好みに合ったものを出そう…という、事務所、レコード会社、作家の先生と、今回はとてもシンプルに曲作りをしていただいたんですが、私にとって、良い巡り合わせの歌を作っていただいた、とすごく嬉しく思っているんです」

田川さんの歌唱も、力みや過剰な装飾がなくて心地よく聴けますが、この新曲で難しかった点、注意した点は?

「幸耕平先生のメロディーって、細かいところに意外とテクニックがいるんです。だから、簡単そうに聴こえながらも、色々と大変なところがあるんです。例えば、細かいビブラートをさりげなく入れていたり、裏でコブシをいれたり…とか。そういう点が難しくもあり、注意した点ですね」

 

夢色、花色、女色

この歌詞は、田川さん自身の事を描いているような感じもありますよね?

「私もそう思います。だからこそ等身大で唄える作品で、田川寿美の色がこの歌詞にはありますね」

皆さまが、待ってたよ!と言ってくれそうな気がするんです田川寿美

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例えば出だしの♪ひとりで生きてはいけないくせに~は、特に田川さんっぽいなぁ、と感じました。どちらかと言うと若い頃は、ひとりで生きていこうとする孤高のタイプじゃなかったですか?

「そうでしたっけ?(笑)。昔の自分を忘れているところもありますけど、自分がそう見られていた…というのは分かります(笑)」

女性演歌歌手の方は、田川さんに限らず、そういうものなのかもしれません(笑)。

「我が道を行く…みたいな?(笑)。でも、女性演歌歌手に限らず、現代は働く女性が多くなって、そういう方が増えている…というのはあるんでしょうね」

この歌の♪夢色 花色 女色~というフレーズは、とても印象的ですが、夢色、花色、女色を具体的に言うと、それぞれ何色になると思います?

「ピンク、水色、赤…かな?」

 

チークと黄色

化粧のこだわりは?

「特にないかなぁ…敢えて言うと、10分くらいでやる、ということ?(笑)。そう言えば、口紅はピンクが好きなんですけど、自分で買った口紅のピンクで、これだ!と思うものがないまま、微妙に違うピンクを買い続けています(笑)」

理想のピンクの口紅を目指して、微妙に異なるピンクを買い続ける…歌も似たようなところありそうですね?

「ああっ、そうかもしれないですね。理想の歌唱を追い求めながら唄い続ける…ピンクの口紅を買うように(笑)。…そうだ、最近はチーク(頬紅)を必ずいれたい、と思っていますね。元気ですよ!という感じになるように、今は口紅より、チークにこだわっています。また洋服も、ベージュとか黒とか、あまり着ないようにしてますね…肌がくすんで見えるから(笑)」

田川さんの私服は、黒とかのイメージありますよ。

「若い時はそれでも良かったんですけどね。だから、最近は黄色の洋服が多いんです(笑)」

 

カラオケアドバイス

新曲でカラオケ大会も開催予定だそうですが、新曲のカラオケアドバイスをいただけますか?

「頭2行の♪ひとりで~から♪私はばかね~までは優しく、♪髪を揺らす~で語っていき、♪春の風~で気持ちを入れて盛り上げて、♪夢色 花色 女色~は右と左に頭を揺らすように唄って、♪女は夢見て~の“夢見て”だけを語り、♪歩いて~はリズムにきっちりハマって唄う…感じでしょうか」

新曲はキーもそんなに高くないですよね。

「今回は敢えてキーを高くしなかったんです。高音でキンキンにならないように、そして音色に変化がつけられるように…つまり一本調子にならないように、このキーになりました」

カラオケでは、その方なりの化粧をするように唄うと良さそうですね。

「うまいですね(笑)。でも、本当にその通りだと思います」

 

息子がいてくれるおかげで、視野が広がります

田川寿美

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息子

息子さんは、もう5歳?

「そうそう、今年、七五三なんですよ。写真撮りに行こうと思っています(笑)」

息子さんは、暗い演歌は好きじゃない、とおっしゃっていましたよね?

「あっ、でも新曲は、私が練習していたら、サビの♪夢色~は覚えて唄っていました(笑)。気に入ってくれたのかな?…やっぱり明るいメジャー調が好きみたい」

それは朗報ですね(笑)。子育ては大変ですか?

「はい、ある意味、仕事より大変です(笑)」

でも愛おしいですよね。

「もちろん、掛け替えのない愛おしい存在。そして息子がいてくれるおかげで、視野が広がりますし、お客さまとの会話も弾むんです。やはり子育てを経験している女性の方は色々と分かっていらっしゃるので、私とも同じ目線で話してくださり、距離もグッと縮まるんですよね。今までにない、お客さまとのコミュニケーションがとれていると思います」

子供と外出すると、回りの方も話しかけてくれますよね?

「話しかけてくれますし、自分も話しかけてしまいます(笑)。昨日も母と兄と息子の4人でファミリーレストランに行ったんですけど、そこで家族連れのお母さん達が“田川さん”と声をかけてくださって、子育ての話をしたんです。歌手だから、というのではない、そういう人とのコミュニケーションが、私を変えてくれたんだと感じますね」

これからお子さんに、どんな田川寿美を見せていきたいですか?

「楽しいだけじゃなく、大変なこともある…という、大変なことも隠さずに見せて行きたいですね」

 

収まったではなく、定まった

次の記念イヤー、30年目へ向けて、どんな目標がありますか?

「これからもっともっと色々なタイプの、色々なカラーの歌を唄える歌手になっていきたいですし、新曲をその入り口になる作品にしたいですね。この新曲は、とても良い出会いだったと思っていますから、これからの田川寿美のスタートになる作品にしたいです。また、大きく目立たなくても、ちゃんと存在しているポジションの歌手になるのが理想なんです。大きく目立たないけど、いつも、ちゃんとそこにいる演歌歌手に、自分らしさを失わず、なりたいですね」

 

夢を持てて幸せです田川寿美

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今の気持ちを漢字で言うと、何でしょうか?

「『心化粧』は、ジャストサイズのTシャツが出来た…という気持ちなんです。
それで…“定”まった…という漢字でしょうか。収まっているのではなく、自分の意思で定まった…と言う気持ちです」

定まった気持ちで、定めた目標に向かっていく…という感じですね。では最後にメッセージを。

「歌手って歌ありき、だと思うんですけど、この新曲との出会いって、何年かに1回のチャンス、というくらいに夢のある作品だと思っています。だからこそ、この歌との縁を定めて、大きくしていきたいですね。夢を持てて幸せです」

※本インタビューは、「歌の手帖」2017年8月号収録の文章を当時のまま掲載しております

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