(C)UTANOTECHO Inc.
※本インタビューは、「歌の手帖」2018年8月号収録の文章を当時のまま掲載しております
『じょんから女節』の影
『じょんから女節』(2003年)は2000年以降の女性演歌で、トップ3に入るくらいの名曲だと個人的には思う。きっと、同じように感じている演歌ファンも多いはずだ。しかし大ヒット曲だけに、長山洋子は『じょんから女節』の影に苦労してきた部分もあった。
「『じょんから女節』以降から、立ち弾き三味線ものの演歌シングルは定期的に作っているんですけど、良くも悪くも『じょんから女節』を意識しますよね。あれを越える作品を…と、意識して似てしまったり、敢えて変えたり。それで曲の制作に苦しんだ時期もありました。でも、『じょんから女節』から15年以上の時間が経って、私も年を重ねてきたことで、時間が解決してくれた…と言うのかな、やっと『じょんから女節』の影から離れた立ち弾き三味線ものを作ってもらった…という感じがするんです」
新曲『じょっぱりよされ』は、デビュー35周年を迎えた長山洋子にとって、新たな立ち弾き三味線もの演歌・第2章、と言える仕上がりになった。
「だから私も『じょんから女節』とはまったく別物の三味線演歌として、新曲を伝えることができたら…そしたら、私自身の新たなスタートとして切り拓けるものが見つかると思うんです」
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デビュー15周年の時、千葉県市原市・有秋公園にて行われた演歌15周年記念コンサートでの、8名の三味線奏者と繰り広げたスペシャル・バージョン『じょんがら女節』は伝説的とも言える圧巻の名唱だった。その映像はDVDにもなっている。「実は久しぶりにプライベートでカラオケへ行って、友達に『じょんから女節』を唄って、と言われて唄ったら、あの時の映像が流れたんですよ。私も見入ってしまいました(笑)」
なにくそ、それゆけ、一歩前へ!
津軽三味線が叩くように刻む強靭な8ビートと、♪あんたでなけりゃ 生きている意味がない〜と言い放つ、じょっぱり(意地っ張り)な津軽女の一途な恋心を描いた歌詞。新曲『じょっぱりよされ』はロックと演歌の、明快なほど必然的な融合を感じる三味線ものだ。
「『じょんから女節』を最初に作った時は、ロック…という発想は全然なくて、その世界観や曲調に合わせて、結果的にそれに近くなった感じなんです。でも、それから年以上が経ったことで、新曲は自然にロックっぽさを最初から意識しながら、年相応の三味線演歌として作っていただきました。だから演歌に興味がなかった方が、この歌から演歌に入って、〝『じょんから女節』っていう歌もあるんだ。こっちも良いね〞と思ってもらえたら嬉しいですよね。むしろ、そうなってもらえるように、この歌を届けていきたいな、って」
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今回は両A面シングルで、もう1曲の『恋・三味線』はメジャー調の親しみ易い三味線演歌となっている
新曲も含めて今、長山洋子は新たな一歩に胸をときめかせている。そのきっかけは、今年の3月3日に開催した湯川れい子氏プロデュース・ライブ「大人のためのひな祭り」だったという。
「そのライブで『蜩│ひぐらし│』をジャズ・バージョンで唄ったりしたことが、とても楽しかったんです。実は今までオリジナル曲のアレンジを変えて、というような挑戦をほとんどしてなくて、そこに一歩踏み出す勇気がなかったんです。オリジナルを、演歌を守らなきゃ、という意識が強かったんです。でもようやく、挑戦の楽しさを知り、一歩前へ踏み出してみたい、と思えるようになりました」
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最後に今、好きな言葉を訊いた。
「5年ほど前から、お習字の先生の書にあった〝なにくそ、それゆけ!〞という言葉が常に胸にあります。何かが出来なくて悔しかったことに対し、なにくそ!と踏ん張りながら、それゆけ!と前に進まなければいけない、って。新曲でも、その精神で歩んでいきたいですよね」
※本インタビューは、「歌の手帖」2018年8月号収録の文章を当時のまま掲載しております