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※本インタビューは、「歌の手帖」2017年10月号収録の文章を当時のまま掲載しております
新曲『男の流儀』がヒット、初座長公演は大成功、コンサートツアーも大盛況─と今年もノリに乗っている我らがビタミン王子、三山ひろし。爽やかな笑顔と力強い瞳、前向きな言葉の数々でビタミン補給♡
厳しき残暑を乗り越えましょう─!
(撮影/島崎信一)
そのまんま(笑)
多岐に亘る活躍の中で、やはり記憶に新しい大阪新歌舞伎座さんでの初座長公演(5月日~6月4日/月号に記事掲載)のお話を伺いたいのですが。伝統ある劇場での公演を拝見して、改めて三山さんは舞台人なのだな、と感じました。2役を演じ、女形姿まで伸び伸びと演じていらして、純粋に楽しめた舞台でした。
「ありがとうございます。たくさんのお客さまにお越しいただき、本当にうれしかったです。(脚本・演出)池田政之先生も “もしかしたら、映像のお仕事が来るのでは?と思うくらいよかった ”とおっしゃってくださいました。弥次六として出ているときと、お殿さまとして出てきた一声目の “母上 ”という言葉がガラッと空気を変えた …と。そこを見て、すごいなと感じてくださったようなんです。もちろん、座長の自分を気遣ってそういう風に言ってくださった部分もあると思うんですが、それでもそう言葉をかけていただけたのが、努力して演った甲斐があったなぁとうれしかったです」
初の座長公演ということで、得たこと、勉強になったことの一番は?
「そうですね …座組の皆さんと(本番の)日間だけではなくて、ずーっとお稽古中も一緒にいたので、まわりの皆さんがいてくださるからこそ、芯の役として立たせていただけているのだ、と。皆さんに支えられて自分がいる …と改めて心底、実感しました」
舞台、怖くはなかったですか?
「怖さはありませんでした。3階席まで、こう上にもお客さまがいらっしゃるのでいつも以上に見られる範囲が広いですよね。ですので、そのあたりは気をつけました。どの方向からも…という所作、動きに」
役作りには苦労されました?
「それがですね(笑)、役作りをしなければいけないと、台本を読みこんで一生懸命役作りをしたつもりだったんですけど、お稽古が始まってから、全然役作りの必要ないな(笑)と。もう、このまんまでいいなって。もちろん、そういう風に作ってくださったんですけど」
三山さん自身に近いように、と。
「はい、初座長ということで負担があまりないように …と。池田先生が僕のいろんな映像を観て “三山ひろしというものは、どういうものか ”を考えてくださったんです。ほとんど、そのまんま(笑)。唯一考えたのは、関西弁ですね。今と昔は違いますし、イントネーションなど」
来年の公演も決定されたとか?
「お陰さまで、7月に。しかも、公演期間中に決定したんです。ありがたいです」
劇場関係者の方々も、若手の座長の誕生を大変喜ばれているようですね。
「今回、総合プロデュースしてくださった大阪新歌舞伎座の星野さんが稽古の最終日、いよいよ明日が初日…というときに、 “新歌舞伎座に、新しい座長が誕生します …!”と涙を流されて …ポロポロ流れる涙に、ああ、三山ひろしを座長にするために、多くの時間と思いをかけていただけたのだ、と。本当に、心で動いてくださって、いいものを観ていただくんや!という気持ちが伝わってきて、楽しさをお客さまに贈らなければいけないという気持ちが更に高まりましたよね。たくさんの、本当にたくさんの方の想いや熱意がこめられた舞台でしたから。足を運んでくださった皆さま、お客さまに心から感謝しています」
チームワークのよさとあたたかさも伝わってきました。お一人おひとりの役者さんもキャラクターが濃くて(笑)。
「みなさん、素晴らしい役者さんで、役を楽しみながら演じてくださっていたのでお客さまがどこを観ても楽しい、という舞台に出来たと思います。皆さんも僕もアドリブを …先生に怒られない範囲で入れていたので(笑)。自分のファンの方、そして劇場のお客さまからも “何回も観るよ ”“何度観ても、楽しい ”と言っていただきました」
初座長を大盛況のうちに終えられたのも、今まで一つひとつのステージを大事にしてきたからこそですね。
「全部が大事です。おろそかにしていいことなんて、ひとつもありません」
弟役なので
早いもので2017年も半分過ぎました。そして、8月には絶好調な『男の流儀』のCタイプがリリースとなります。カップリングが『雪に散る』。和楽器をふんだんに使った、じっくりと唄えるタイプで …。
おろそかにしていいことなんて …
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「そうなんです。お芝居の一幕に人生を重ねて唄っている歌なんですけど …風景が見えますよね。元々マイナー調の歌が好きなので、うれしいです。実はこの作品、藤あや子先輩の ※明治座特別公演に出演させていただくのですが、その舞台の劇中歌になるんです。なので演目 “明治一代女 ”をベースにした作品になっています」
大先輩の周年の舞台に立てるとは、勉強になりますね。どんな役なんですか?
「弟役です …よかったらこちらを(公演のチラシ)」
お? おおっ、かわいいですね!(笑)。前髪下ろすとまた雰囲気が …。
「あはははは、恥ずかしいですね。弟役でしかも書生なので、そのイメージでヘアメイクさんにやっていただいたんです」
役柄としては、真面目なキリリとした?
「真面目 …どうでしょう。どちらかというと、かわいい感じでしょうか(笑)」
アニソン
今年の夏も忙しそうで …仕事の前日には呑まない主義の三山さんですから、また、長らくお酒が呑めないですね(笑)。
「そういうことです(笑)」
初座長公演の千穐楽で呑んだお酒は美味しかったですか?
「美味しかったですねぇ。もう、待ちきれなくて、帰りの新幹線で呑んじゃいましたから(笑)。お弁当を買って “呑んじゃいますか ”“呑むしかないでしょ! ”って」
さて、待ちきれないといえばアニメソングのカバーアルバム『ミヤマDEアニメ~三山ひろしが歌う、国民的アニメソング~』が8月2日に発売となります(この取材は7月上旬)。意外といえば意外ですが、三山さんのカラッした色の方の声色だと確かに合いますね。
「アニメソングも大事です。いい歌、たくさんありますよね。ただ、アニメソングをどのステージで唄えばいいのかな?と悩むところはありますが(笑)。アニメソングは、お子さんが唄いやすいようにキーが高い歌が多いんですよね。なので歳の男が唄って怖く聴こえない声色で唄ってみました(笑)。どの曲も、魅力の再現をする …というコンセプトなので、世界観を壊さないように。ということで、コブシを入れている歌ばかりではないんですよ」
早く生で聴いてみたいですが、アニメソングのコンサートは…。
「そうですね、やってみたいですが、演歌好きのお客さまは戸惑うかな…と思いますし。では、通常のコンサートの中にコーナーとして …と考えたときに、どのあたりの歌だと皆さん、ご存知だろう…と。そのあたりを加味しながら、選曲しないといけないですよね。『がんばれ!赤胴鈴之助』『宇宙戦艦ヤマト』『にっぽん昔ばなし』『鉄腕アトム』あたりかなぁ。3世代で楽しめるコンサートをいつかやりたいという夢があるので、アニソン唄いながらけん玉やるとか(笑)」
三山さん世代のアニソンというと?
「実は、あんまりアニメを観ていないんです。ずっと演歌なので(笑)」
三山流ビタミン補給
今回のテーマは “三山さんで残暑のビタミン補給 ”。逆に、三山さんにとってのビタミン補給はお客さまの笑顔だと思うのですが…。
「本当にそうなんです! これだけ毎日動いていると、日々のテンションって大切なんですよね。そのモチベーションをどう保ちつつ、ちょっとずつどう上げていくか。お客さまに頼るところが大いにあります。もちろん、喜んでもらうためにやっているので頼ってばかりではないんですけど。心血注いで一生懸命に考えて、ああしようこうしよう……例えばマックスでお客さまへ投げたとすると、100になって返ってきたりするんです。そうすると、残りが僕の栄養になるんですよね。その栄養を糧に次のコンサートでは、新たにこれを…と、次へ進めるパワーになるんです。お客さまの前に立って、喜んでくださる顔を見るのが一番の幸せですから。自分を俯瞰しながら、これは自分に合う? 合わない?を常に考えています」
失敗したり、凹んだりすることも?
「そりゃ、ありますわー。ありますよ(笑)。変な失敗して、その日は凹みますけど、翌日に持ち越さないです。ひとり反省会ですよね。仕事があると呑めないですしね …寝ます」
竹とんぼを作ったり?
「無心になるために(笑)。だけど、旅に出ているときはそれも出来ないので、けん玉をやったりとか、あとはもう、仕事と気持ちを切り替えて映画を観たりします。関係あることをしていると、失敗したことがチラついてしまうので。もう失敗しないように頑張ろう、と頭も切り替えて大好きな邦画、時代劇を観ます。最近では “日本のいちばん長い日 ”を観ました」
映画もいいですよね。紙ヒコーキのラジコンを飛ばす時間もなさそうですが新しいもの、何か見つけました?
「見つけて欲しいものがあるんですけど、まだ発売になっていないんです…スマホに着けられるドローンがあるんですよ! セルフライカメラっていうんですけど。スマホのカバーの後ろに着けて、外すと羽が出て飛ばせるので、これからの時代は自撮棒もいらなくなりますよ~。自動追尾機能も付いていて自分を追いかけてくれるので、ひとり “ひろさんぽ ”も撮れちゃいます(笑)」
しかも、格好良いですね。未来映画みたい、欲しいです!
「うれしいなぁ、みんな馬鹿にするんですよ(笑)。クラウドファンディング(不特定多数の人が財源の提供や協力をすること)なので、もうお金を出してるんです。最新のテクノロジーですから、近未来ですよね。僕が夢を見ていただきたい、夢を叶えたいと思っているので、夢のあるものが大好きなんです。そう、僕のビタミン補給は近未来のものを探して夢見ること、ですね。次なる新しいアイテム、考え方がビタミン。常にアンテナを張って、ワクワクしていたいです。自分にワクワクがないと、観て聴いてくださる方にもワクワクしていただけないと思うんです」
セルフライカメラを持って江戸時代に行ってみたいですね。
「いいですね! 何奴! 曲者! ビタミン補給は “ワクワク ” なんて(笑)」
ビタミン補給は”ワクワク”
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■自分自身の心も躍動させながら一つひとつの場所、出会い、お客さまを大事にしている若き獅子・三山ひろし。「行った先でどれだけ自分を残していくか、ということなんですよね。必ず自分を残して、また観たいなと思っていただかないと、次へ繋がらないですから。キャンペーンも舞台も、気持ちは同じなんです」 真摯な気持ちはぶれない。秋には、東京での大きなコンサートも控えている(欄外参照)。強い瞳で見据える未来への道と、今立つ場所。声だけではなく、その笑顔と存在自体が歌謡界のビタミンである。
※本インタビューは、「歌の手帖」2017年10月号収録の文章を当時のまま掲載しております