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※本インタビューは、「歌の手帖」2018年2月号収録の文章を当時のまま掲載しております
積み重ねて、新しく…“在”
歌謡界の女王にして、若者には“ラスボス”や“お母さん”として親しまれている、我らが幸っちゃん。
そう、誰もが“幸っちゃん”と呼んでしまいたくなるほど、気さくで明るくやさしい人柄。12月6日にリリースとなった新曲『存在証明』は、そんな幸っちゃんのやさしさと温もりが伝わってくるような、メッセージソングだ─。
撮影/渡辺秀之
小林〝辛(から) 〞子
今年もいろいろな挑戦で楽しませてくださいましたが、仕事内容で幸子さんがNOということはありますか?
「せっかく、いい状況にいて、いろんなお話をいただくので。やってみよう!と。ダメならやめればいい、という発想かなぁ。やってみて自分に合わなかった、という」
スタッフ「合わなかったことは、ほぼないですけどね(笑)」
「私もさ、例えば …ゴスロリ?私が? えっ? って言うんだけど、 いろいろ説明してくれて、それを聞いているうちに、うーん …大丈夫かなぁ? え? 大丈夫? ふ~ん、やってみようかなって。ノリやすいのかもしれませんね(笑)。今の時代って、目まぐるしく変わっていくでしょ。その中で新しいことを常にキャッチしてくれるスタッフ、仲間がいてくれて、すごく助かるし、うれしいです」
ケンタッキーとのコラボもおもしろかったです(笑)。辛いチキンシリーズの…。
「小林〝辛〟子…辛(から) 子(こ) …おもしろいね!って(笑)」
抽選で10名に当たった写真集では…頭に唐辛子の着ぐるみやホットパンツ姿なども(笑)。
「何やらせるのかねぇ、楽しかったよ(笑)。でもちょっと、恥ずかしかったな(笑)。出来上がった写真を見たら……笑えた。笑えるのって、いいよね。ともかく今年も、いろんな格好させていただきました(笑)」
自分の生き方、見つけよう
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新曲『存在証明』の作詞・作曲をされた志倉千代丸氏もまた、若い世代では認知度の高い …ゲームやアニメの作品をたくさん手がけられている方ですね。
「そう、水樹奈々ちゃんの作品とかね」
まるで映画音楽のようにファンタジックで壮大なメロディ、そしてあたたかなメッセージ性のある歌詞、包む込むような幸子さんの歌声…。
「大きなメロディですね。『風といっしょに』(劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲/1998年)のような歌、そして男でも女でもなく…なんて言うのかな…今の子たちが置かれている立場ってネットの社会、それは素晴らしい社会だと思います。ただ一つ違う方面から見ると、ネットの中でどんどんひとりぽっちになったりとか、引きこもりだったりする子たちがたくさんいる…ネットの中で、悪意がどんどん拡散していって最後にはどうしていいかわからなくなっている。死にまで追い込まれてしまう子まで…そんなこと見なくていいよと言われても、開いてしまう、見てしまう…。そういう子たちを、母親 …みたいな気持ちで少しでも救えたらいいね、というコンセプトなんです」
幸子さんご自身もブログとツイッターをされていますが、ネットで幸子さんのことが書かれているものを見たりも?
「しますよ。〝小林幸子〟で検索もね(笑)。でも、何を見てもブレないで、自分がどう生きていくかということを追究するには、そういうことを知ることも必要だな、と思うので。ただ、年端もいかない、揺れ動いている子供たちは、ネットの世界でいいか悪いか判断できないですし。私ですら、私よりももっと上の方々も、大人だから不安だとは言わないけど、みんな心の中は不安だよね。どうやって生きていい かわからなくて。そんな人たちに も、メッセージが届いたらいいな…と。元気になりましょうという歌ではなくて、〝君は君のままでいいよ〟という歌なんです」
幸子さんも不安になられることが?
「何言ってるの、不安だらけよ(笑)。みんなと同じ、不安」
昔からの仲間、スタッフがいらっしゃいますのに。
「みんなで〝どうしよう…〟って(笑)。でも本当に仲間がいるのは、強い。だから仲間を作らなくちゃ、作るためには自分の殻から出て、自分を出していかなくては。私だってウロウロするし、不安だし。いろんなことがあったけど、みんなが傍にいてくれたから、励みになったし、今の自分がいるんだと思う」
新しい、自分
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11月3日に、ニコニコ動画の超パーティ(略して〝超パ〟/さいたまスーパーアリーナ)で早くも新曲『存在証明』を披露されたとか。新曲の制作には幸子さんのご意見を?
「こういう風な形だったらいいかな、というメロディラインや歌詞が自分の中にあったんです …でも、それは今までの小林幸子を考えているのであって、新曲は新しい方が考える小林幸子なんですよね。なので〝はいっ!〟って乗ったんです。意見は一切、言いませんでした。新しい世界をすべて受け入れてみよう、と。プロデュースからすべて、新しいチームにおまかせしました。宇宙人の発想の固まりみたいな人たちで(笑)。だったら、私がそっちの惑星に入ろう、と。最初、小林幸子はこの歌をどうやって唄うんだろう?って、自分で思った(笑)。自分でも楽しみだって」
歌詞には、今までにはない単語が多いですが、不思議と不自然ではないんですよね。ラストの ♪ラララ~は、特に温かいですし。演歌・歌謡曲好きの方々はもちろんですが、さまよえる10代・20代にも、新曲も聴いて何かを感じてもらえたらうれしいです。
「うれしい…そう、先日ね、とてもうれしいお手紙をいただいたんです。〝イジメにあって引きこもっていた小学生の息子がある日、小林幸子さんのアルバム『さちへんげ』を聴くようになりまして…親としてどう助けていいかわからなかった息子、幸子さんの歌で元気になりました、本当にありがとうございます。今、中学2年生になりました〟と。カラオケにも行けるようになって、小林幸子しか唄わないそうなんです。元気になったと聞いて、私も役に立てているって、とてもうれしかったんです」
人生において正解・不正解なんて、ない─
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お母さん
超パでの初生披露はいかかでしたか。
「今までの超パの中で一番感動しました。新曲の持つ力というのが素晴らしくて…唄う前にね、みんなに言ったんです。〝私はあなたたちのお母さんよりも、もっと年が上だと思う。だから、一つだけ言わせて欲しい。例えば、自分がこれをやりたい、楽しみたいんだって思ったことがあったら、素直に、突き進んで行ってほしい。それが例え、まわりの人と違った方向だとしても、それでいい。人生において正解・不正解なんて、何にもないから。だから、迷わなくていいんだよ〟って。それから『存在証明』を唄ったら、みんな…もちろん、1万6千人なので前方の客席しか見えないけど、泣いてるんです。本当に、泣いていて…そうだ!って、これでいいんだ!って思ってくれたのかなぁ。この歌はね、それでいいんだよ…と言いたいだけですから。上から目線でも、お仕着せでもなく。超パっていつも唄い終わると〝ウォオオオ!〟って歓声の波が凄いんです。でも、『存在証明』はそうじゃなくて拍手だったんです。あの拍手、うれしかったなぁ」
一応、夫婦ですから(笑)
とても楽しいカップリングの『サチコサンサチコサン』は『エイリアンエイリアン』(ボカロの人気曲)の替え歌ですね。
「替え歌って知らない方は、ずいぶん自分を前面に出した歌を作ったなぁと思わるでしょうね(笑)」
(笑)、おもしろい歌ですよねぇ。カラオケでも唄ってみたくなります。
「先日もね、NHKのうたコンで唄わせてもらったんですけど純烈のみんなが喰いつく、喰いつく(笑)。おもしろがってくれて」
純烈さんは大丈夫ですか。
「大丈夫よ(笑)。とても礼儀正しくて、挨拶もきちんとしてくれるし、楽しくていいコたちですね」
スタッフ「ご一緒する度に、すごく興味を持ってくださって、いろんな質問を小林にしてくれるんです(笑)」
「『サチコサンサチコサン』を唄い終わったら、〝こんな歌詞、こういう世界を唄えるんですね!〟〝衣裳はいくらするんですか〟って(笑)」
そうですか(笑)。最近、ストレス解消はどうされてますか?
「もう、2匹の子供(猫)。かわいいの。地方へ行くと、旦那じゃなくて猫が心配(笑)」
ご主人とは、一緒にお食事されたり?
「一応、夫婦ですから(笑)。ご飯作って、一緒に食べますよ。仲良くしてます。おもしろい人なの。医療の仕事をしているので、仕事の話になるとよくわからないんだけど(笑)、それ以外は、酔っ払いのやんちゃな親父で。ただ私は主婦らしいことしてないから(笑)。主人も主婦を求めてないし、100%パートナーですね」
最後に、2018年の気合いを漢字一文字で表わしていただけますか?
「うーん、一文字ね…〝在〟かな。 存在の在。今、自分が〝在る〟のは、今までの積み重ねがあるから、ですよね。これからも、自分の存在を新しくしていくために、自分の積み重ねてきたものを大事にしながら、進んで行きたい。あれ? 私、カッコよくまとめた?(笑)。積み重ねてきたことって自分が生きてきた証、なんだもんね」
編集後記
■梅沢富美男とのデュエット『愛の歌』(auのCM)が話題、幸っちゃんの『越後情話』を聴かせながら造酒された純米吟醸酒「越後情話」が登場するなど、今後も盛りだくさん、目が離せない。コンサートでは親子や3世代で来ている人も多いという。ジャンルを超え、世代を超える歌声の波及の行方に、これからも注目─。
※本インタビューは、「歌の手帖」2018年2月号収録の文章を当時のまま掲載しております