藤あや子

(C)UTANOTECHO Inc.

※本インタビューは、「歌の手帖」2020年1月号収録の文章を当時のまま掲載しております

写真提供/ソニーミュージック・ダイレクト

令和初は中村典正先生で!

『こころ酒』(’92年)と『むらさき雨情』(’93年)という大ヒット曲が「平成で最も売れた演歌・歌謡シングルTOP10」に選ばれた藤あや子。その2曲を作曲したのが中村典正氏(山口ひろし名義)だ。

「令和になって最初のシングルは、どうしても中村典正先生にお願いしたかったんです。なので、ずいぶん前から歌詞を書いていたんです(作詞は藤あや子自身=小野彩)。この歌詞は中村先生と松前ひろ子さんご夫婦の夫婦愛といいますか、お2人が歩まれてきた夫婦道をイメージして書いたものなんですね」

藤にとって『みれん』(’95年)以来24年ぶりとなる、念願の中村典正作品。それが新曲『ふたり道』だ。

「曲が出来上がった知らせを受けて、デモテープを受け取りにスタッフが松前さんの事務所へ伺った時、松前さんから〝実はお伝えしないといけないことがあります。昨日、主人が亡くなりました〟と報告があったそうです…。私は先生の具合がそこまで悪かったことを全然知らなかったので、すごくショックを受けました」

8月16日、作曲家・中村典正氏は肺炎のため逝去された。享年83歳。『ふたり道』は遺作となってしまった。

命がけの曲と原点回帰

「デモテープは中村先生のピアノ演奏をバックに、松前さんが唄ってくださったものでした。それが最後のご夫婦での演奏になってしまったようです。レコーディングには松前さんも来てくださったんですが、私はもちろん、みんなの想いが通常とは違いましたね。先生が命がけで書いてくださった曲ですから。しかも、先生と松前さんのことを書いた歌詞の歌を、先生が亡くなってすぐの時に、松前さんが見てくださっている中でレコーディングする…という状況。もう、何回も泣きそうになりました。だけど溢れる感情を抑えながらも、先生の魂を感じて唄わせていただきました」

藤あや子

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『ふたり道』は、まさしく藤あや子が原点回帰したようなメジャー調演歌だ。

「実は『むらさき雨情』で先生にレッスンを受けた時、〝雨〟を2回繰り返すフレーズで何度も引っかかって、〝先生、申し訳ありませんが、雨を2回繰り返すところがとても唄いづらいので、ここを1回にしていただけないですか?〟とお願いしたんです。先生は〝そお?…でも、これ、2回の方が良いんだけどなぁ〟と優しく言ってくださって。今思えば、なんて生意気なことを先生に向かって言ってしまったんだろう…と反省するばかりです。そして、この『ふたり道』の〝女ですもの〟も私が書いた歌詞は1回だったんですが、曲が出来上がると2回繰り返しになっていて…先生らしいな、と嬉しくて胸が熱くなりました」

なお、以前は中村氏が日本クラウン専属だったため、他メーカーの歌手に曲を書く時は山口ひろし名義だったが、今回のクレジットは中村典正。

「そう。この字面もメッチャ嬉しいの。憧れていましたから。とにかく中村先生への想いで、この歌は私の気合いの入り方が違うんです。先生のためにもヒットさせたい。だから久しぶりに即売もキャンペーンも、できる限りしたいです。歌と共に初心に返って、『ふたり道』を多くの皆さまに届けたいです」

最近、藤あや子のTwitterやブログなどで頻繁に登場する、彼女が溺愛する愛猫のマルちゃんとオレちゃん。

藤あや子

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▲産まれて貰ってきたばかりの頃

「捨て猫を保護している知り合いの方がいるんですが、今年、保護して3日目くらいの猫ちゃんが産んだ子達の中から、ひとめぼれして貰ってきたんです。マルちゃんという男の子と、オレちゃん(正式にはオレオちゃん)という女の子。私は小さい頃から捨て猫を拾って飼ってたり、6匹くらいいた時もありました。
また、ワンちゃんも飼っていましたし、オウムもインコも。動物大好きなんです。 マルちゃんとオレちゃんには日々、すごく癒されてます。毎日新鮮なこともいっぱいで、面白いですよ。冬美ちゃん(坂本冬美)も私に影響されたのか、犬を飼いたいな、って言ってました(笑)」

藤あや子

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▲近影のマルちゃん&オレちゃん

藤あや子

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▲カップリング『角館恋灯り』も同じく藤あや子(小野彩名義)作詞で、作曲は中村典正。意外にも彼女の故郷・秋田県を舞台にしたシングル(カバー除く)は、これが初。
「これは秋田県出身の私だから書けた、角館を舞台にした歌詞だと思います。地元の人が聴いてくださったら、絶対に〝わかる!わかる!〟と共感してくださると思うの」

※本インタビューは、「歌の手帖」2020年1月号収録の文章を当時のまま掲載しております

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