橋幸夫

(C)UTANOTECHO Inc.

※本インタビューは、「歌の手帖」2020年8月号収録の文章を当時のまま掲載しております

橋幸夫は恋の歌だ!


60周年を迎えた橋幸夫の新曲『恋せよカトリーヌ』は、あの『恋のメキシカン・ロック』などの往年
のリズム歌謡路線を彷彿とさせる作品。そして同新曲の作詞作曲を手掛けたのは、橋の大ファンでもあるテリー伊藤(テレビプロデューサー・タレント)氏である。

橋幸夫

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「ここ数年、テリーさんと何度か食事する機会があったんですけど、僕の担当ディレクターから〝例えば新曲はテリーさんでどうでしょうか?〟と提案されたんですよ。もちろん僕はOKでしたから、それでテリーさんにお願いをしたら、テリーさん、すごく燃えてるの。〝橋幸夫は恋の歌だ! 橋幸夫は60周年だろうとラブソングなんです! それが橋幸夫の魅力なんです〟と力強く断言するんですよ(笑)。ほら、60周年だと普通は人生歌みたいな方向になりますけど、彼は〝それは違う!〟と。でもね、僕は今年でもう77歳ですよ。77歳の男が恋の歌って …照れるじゃないですか。だから最初は『恋せよカトリーヌ』を唄うのに気恥ずかしさがあったんですけど、徐々にこの歌の魅力を強く感じることができて、よし!やりきってやろう!!と思えたんです。

橋幸夫

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そう決断したら、テリーさんが振付師さんを呼んでくるわ、スタイリストさんをつけるわ(笑)。
衣装もボーダー柄のシャツに白いパンツ。まぁ今回、僕は何も口を出さずに、ぜんぶおまかせです。
レコーディングでもテリーさんから、だいぶダメ出しされましたよ。〝橋さん、ボンジュール!って、もっとこんな感じで!〟とか、すごくうるさいんだもん(笑)。でもね、60周年をテリーさんにお願いして良かった、と本当に思いますね。夢を感じますから」


「橋幸夫の歌はほとんど唄える」というテリー伊藤氏の橋への熱烈な想いが詰まった『恋せよカトリーヌ』には、60周年の今も恋せよ!という希望のパワーが溢れている。

夢の翼で

橋幸夫

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橋幸夫は60周年を迎えるにあたり、所属事務所を原点回帰となるビクターエンタテインメントに復帰。
その同社所属チームは「 3rd Wing(サード・ウイング)」と名付けられた。

「60周年で、これからどうしようか?と考えていた時、担当ディレクターが3つの翼、というのを
考えてくれたんです。1つ目は、私がこの世に生を享けた1943年 5月3日の〝命の翼〟。2つめは、私が『潮来笠』で歌手デビューした1960年7月5日の〝希望の翼〟。そしてデビュー60周年を迎える2020年は、第3の〝夢の翼〟 でさらに大きく羽ばたく…という願いを込めて、〝3rd Wing〟という名前を私の所属する部署につけてくれたんです。うん、夢の翼で、今年は大きな夢を見ちゃおう!と」

橋幸夫
▲レコーディングでテリー伊藤さんと 

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60周年を迎えた橋はYouTubeチャンネルを立ち上げる予定。
「テリー伊藤さんYouTubeチャンネルを見て触発されたんです。彼は趣味がいっぱいあって、
その趣味を前向きに実益にする意欲に溢れていて、僕も60年のキャリアを生かそうと …
例えば時代劇のチャンバラを教えたり、色々と企画中なんです」

橋幸夫

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そう思った矢先、新型コロナウイルスの影響で、予定していた60周年の今年前半のイベントやステージが延期&中止となってしまった。

「自粛期間中は自宅にじっとしていたよ。歌い手生活60年の中で今が一番家にいるよね(笑)」


こんな状況になっても、彼は明るく前を向いていた。そこはさすが60年のキャリアゆえ、だろう。

「これまで、さんざん語ってきましたけど、僕は歌い手になろうと思ってなった人間じゃないんです。歌い手にさせられて、いつの間にか芸能界に入らされて、いきなりデビュー曲『潮来笠』がヒットしちゃったから、もう、やらざるを得なくなってしまったんですよね。でも始まってしまったから、頑張らないといけなかった。だから無我夢中でやり続けましたよ。

思い返せばデビューした1960年は、これから日本が経済大国になろうとしていた時代。
そして、テレビの普及で日本の芸能界も大きく変わっていった時代。そういう時代の大きな変遷の中で生きてきましたから、時代がまた大きく変わろうとしている今も前を向いて耐えるしかないかな、と。この状況を乗り越えられるように、夢の翼を抱えて、今は逆に夢見心地で耐えていたいよね」


『いつでも夢を』と唄っていた橋幸夫の〝夢〟は、まだそこで鮮やかに輝いているようだった。

※本インタビューは、「歌の手帖」2020年8月号収録の文章を当時のまま掲載しております

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